雑感

地震

地震があったときは、お茶の水にいた。妻の通う産婦人科があり、仕事がなかったので同行していた。ホワイトデーのお返しという名目で恐喝され、結婚式を挙げたホテルで昼飯を食べ終わり、手洗いに立った妻を待ちながらぼんやりしていた。揺れ始めてから少し…

困惑

授業で使おうかと思ってベルクソンを読み返していて、何だか変な気分になった。「困惑」とでも言うべきなのでしょうか…。オカルト的な妄想が盛りだくさんで、本気で言っているのかしらと思ってしまった。あるところまではおもしろかったのに、しだいにあれ?…

ついでに

大学入試カンニングについて。最初はわけがわからなかったけれど、実態が明らかになってみると、単にノイローゼでしたってことでしょう。大騒ぎをしたわりには、あっさりとした話だ。立場上はカンニングを奨励することはできないが、同時に、なぜカンニング…

語るまい

最近気づいたのだが、新聞の効用を説くのは新聞社の人間だけだし、紙の本の意義を説くのは書き手か出版業界の人間だけだ。これまで気づかなかったほうがどうかしているんだけど。同じように、哲学の意義を説くのも業界人だけだ。自分が職業にしている事柄の…

題名のセンス

今学期の大学では、ルソーを中心に扱った。本当はもっとマルクスに時間を割くつもりだったのだが、調子に乗って喋っているうちにそんな余裕がなくなってしまった。実は学内に右翼の学生が潜んでいて、ぼこぼこにされたりしたらどうしようなんて思っていたが…

体力

研究で得たものを改めて考えてみると、むつかしい本を読めるようになったということ以外には何もないということに気づかされる。げんなりする現実だ。いったい何をやっておったのだろう。できるようになったのがこれだけなのだから、もちろんまだ何もやって…

機会原因論

この前、現代文の授業の折りに、「子供を作る」という表現には何となく違和感がある、「子供ができる」と言ったほうが実感に即しているような気がするという話をした。前者は、何か別の人格をもった別の個体が誕生するということを忘れていて、一人の人間を…

朝の商売

今日の日経夕刊の一面に次のような記事が載っていた。 午前7時半、まだ人通りも少ない東京・八重洲のオフィス街に女性12人が集まってきた。会議室のテーブルに海や山、犬や猫などいろいろな写真やイラストの絵はがきが無造作に150枚ほど置いてある。 「何か…

田中

『コンビニアフロ田中』が、とうとう最終巻を迎えてしまった。二週間に一度の金曜日が楽しみだったのに。もともとはスピリッツで連載されていて、題名が、『○○アフロ田中』の「○○」の部分が「高校→中退→上京→さすらい」に変わっていった、というものである。…

つまらない文章

一般教養で哲学の授業をしようとすると、デカルトのような超王道か、あるいは身近な話題に結びつきやすい文章を選ぶことになる。学生に感想を書かせると、前者にはあまり心ひかれることがなく、後者に関しては本当に雄弁になる。しかし、学生が書いた感想の…

鳩山首相は偉大な政治家なのかもしれない

記者会見を見た。どんな言い訳をするのかと思っていたら、「なぜ言ったことを実行することが不可能だったのか」ということを明快に説明していた。正直に言って、けっこう驚いた。日本の政治家の言葉の中心は「何でもやります」あるいは「何でもやれます」と…

社会常識

偉大なる横綱朝青龍が引退した。生きる歓びが一つ消滅した。最後の勝利を大先輩と共に見送ることができたのが、せめてもの幸運だ。 横綱に対する批判については措いておこう。どれも馬鹿らしいものばかりだ。今回は「相撲界」への批判について。気になるのは…

暑い寒い

気がついたら、暑さよりも遙かに寒さに強くなっていたらしい。子供の頃は有無を言わさず夏を好きだったのが、湿った空気もダメ、エアコンもダメで、夏の間は汗にまみれてぼんやりしていることが多くなった。今年の冬は、もっと寒くなるもっと寒くなると思っ…

総括

今年はいろいろあった。新しく仕事を始めて、結婚をして、博士論文を書いた。調理器具もいろいろと新しくなり、料理のレパートリーを広げた。家の前の魚屋に誘われて、魚屋の組合(そんなものがあるんですねえ)が主催した料理教室にも参加した。あまりにも多…

たとえ話では済みません

論文執筆を便通にたとえたことがある。(汚い話にたとえると話がわかりやすくなるような気がするのは、知性と品性が足りないせいだろうか。)詰め込んで書かずにいると便秘になって言葉が出てこなくなり、消化不良のまま書くとわけのわからない下痢みたいに…

そいつが自然です

先日、高校一年生を相手に、「作為によって作られた制度が、あたかも自然のものであるかのように捉えられてしまう」という、よくある話の説明をした。一学期には丸山眞男なんかも読ませてあった生徒たちである。それで事例として、交通制度の話をした。歩い…

理解できないと不安

今日は仕事があるということを忘れていた。というよりは、「ある」という可能性をまったく考えていなかった。どうやら「昼間の授業はなし」というのを、「今日の授業はなし」というのと勘違いしていたらしい。手帳には「授業なし」と書いてある。山形人(たぶ…

あたたかいわが子の体が切り開かれ、そこからまだ動いている心臓が摘出される光景を、人は直視できるのだろうか

臓器移植法の改正法案が衆議院を通過した。おそらくこのまま参議院でも可決されることになるのだと思う。しかしそれについて嘆いても致し方ない。これからは、遺されることになるであろう人々の判断と意志にすべてがかかることになる。法律で脳死が人の死と…

結婚制度

既婚者の中には熟知している方々も多いとは思うが、結婚というのはなかなか大変な作業である。難しいと思っていた問題が実に簡単なことだとわかったり、逆にあまり深く考えていなかったことが大きな波紋の可能性になったり…。頭を使う。論文を書くよりもはる…

偉大な平凡さ

先日、アフガニスタンでNGO活動に参加していた伊藤和也氏を扱ったNHKスペシャルの再放送を見た。金目当てのアフガニスタン人に拉致されて殺害された青年である。軽い気持ちで、彼の撮った写真が美しかったからというだけで見始めたのだけれど、そこに描かれ…

誰の子供?

不妊治療中の女性に、誤って別の夫婦の受精卵を移植した可能性があるため、妊娠した女性が中絶をし、病院に対して訴訟を起こしたという記事が、朝日新聞のトップニュースになっていた。ミスをした医師に責任があることは確かだし、苦労した末の妊娠がこのよ…

金よこせ

考えてみると、人文系の研究者が飯を食っていける社会というのも奇妙なものだ。いったい何を対価としているのだろう。「智恵」だなんて答えることができる人はいるのだろうか。 御用学者にでもならないかぎりは、人文系研究者は社会の寄生虫であり、贔屓目に…

間にある町

この前の週末、箱根に行ってきた。小学校二年生のときに一度行ったきりだったので、およそ10年は経過している。大涌谷で黒たまごを食べたこと、その店の電話番号の下4桁が9605(クロタマゴ)だったこと、硫黄のにおい、それくらいしか記憶になかった。子…

どすこい

大相撲初場所が終了した。朝青龍の優勝。本当に危ない相撲ばかりで場所を大いに沸かせてくれた。本割で負け、決定戦で勝ちというのが直前の私の予想が当たった。あんまり強くはないけれど、無理矢理にでも勝ってしまうという…。持ち味がよく出ていた。 今場…

国民国家?

大学に入学して最初に受けた哲学の講義は、アーレント、レヴィナス、デリダという三人のユダヤ人哲学者を順に扱うものだった。その頃はいま以上に歪んだ世界観をもっていたし、頭も相当にかたかったので、内容を十分に理解できていたとは思えない。しかし、…

ほしいもの

眠れない。最近はまたしばしばこういうことがある。起き上がってみて何かをしようと思うとしだいにまぶたが重くなるのに、もう一度布団に入ってみるとはやり眠れない。困ったものだ。 そんなときにいろいろなことを考えるのは子供の頃からのことで、今日は、…

昨日の続き

要するに、何かを実際に「やる」ということが必要だと思ったわけだ。理論的実践だとか言って、思考することも一種の行為であるとする考え方もあるが、それは単に職業大学人が自分の立ち位置を正当化するための論法にすぎないし、逃げであることは否定できな…

方向転換の時期かもしれない

某研究員に落ちた。この時期に多くの大学院生たちが一喜一憂する、あれである。今年からネット上で見られるようになったおかげで、郵便屋さんを待ちわびるという作業がなくなったのはよかった。 驚くべきは、人文学の分野の全体で半分以下の順位で、おまけに…

若者による老いの定点観測

数年前に撮った証明写真を何種類かひっぱりだした。街中にある500円くらいで六枚つづりの写真が出てくるあれである。カーテンを閉めるときがなぜか道行く人の視線が気になる。一枚も使用していないのが何種類かあるのは、髪を切るのが嫌いで必要なときにはく…

大人の楽しみ

今年の四月から大学に喫煙所が設置されて、そこでしか煙草を吸うことができなくなった。何の制限もなかったこれまでがおかしな話で、それ自体は何の異存もない。しかし屋根もなく雨ざらしで、くつろげる空間ではない。ひどい話だ。一か所にまとめればそれだ…