人生の縮図

ようやくまともな日々が戻ってきた。仕事さえなければ最高だけれど、それでも数日前まで続いていた非人間的な精神労働に比べればまともなものだ。とはいえ、もしかしたら体のほうがはるかに疲れていたのかもしれない。睡眠時間も短くなり、煙草の本数も増え、食べても体重が落ちていた。元気になって煙草がうまい。こういうのは逆によくないことかもしれないけれど。いずれにせよ、論文なんて下賤なものは二度と書かない。
今日は人間らしい生活を取り戻す一貫として、友人からもらった高級圧力鍋でビーフシチューを作った。前回その鍋をおろして作ったときには何ともいえない微妙な味になって、しかも料理で失敗したことが久しぶりだったこともあって、たいそう落ちこんだのだけれど(ん? ということは論文書きながらもしっかりそんなことをしていたということか)、本日あらためて挑戦。すでに一昨日のうちにスーパーで見かけた牛スネ肉を買っておいたのである。いつも行っているのはあまり大きくないcoopで、常にシチュー用の肉が置いてあるとは限らない。目に入った瞬間にカゴに放り込まなければならない。前回は比較的よい肉を買ってしまったのも、ショックを大きくした原因だった。だってお祝いの圧力鍋、あこがれのビーフシチューなんですもの。今日は池袋に行って、かつてそのちょっと高い肉を買った西武の地下でデミグラスソースの缶詰とマッシュルームも買ってきた。たまに行く高級スーパーはいいですねえ。置いてあるものがまったくちがう。外で食べるよりもずっと心が躍る。
途中経過は省略。
たいへんおいしゅうございました。なんというか、ほんの細部に気を配って、匂いをかいだり、味見をしたり、肉をはしでつまんで固さを確かめてみたり、塩かげんを微妙に変えたりという作業で、驚くほど味が変わった。なんというか、「料理は人生の縮図である」なんて言ってみたくもなりますな。財布がゆるす範囲でよいものを買い、素材の味を生かし、神経質になることなくできるだけ細かいところにまで気を配る…。お、女性誌みたいなことを言ってる。いいぞ、その調子だ。