散髪

髪を切ってきた。湿気の多い季節が多くなって、妙なクセのある私の髪は、おでこにひっついたり外に向かって広がったりと、なかなか大変なことになる。面倒で金もかかるので、強い決意をしないとなかなか切りに行くことがない。今回はかなり早いほうだったと思う。いま切りに行っているところは、考えてみると通い始めて既に6年ほど経っている。大学が今のキャンパスに変わって約半年くらいしてから通い始めたので、定期的に通う場所としてはかなり長い部類に属する。しかし最近になるまでは半年に一度くらいしか髪を切ることがなく、今の季節に行けば、帰りには「よいお年を」と言われるくらいの頻度でしかなかった。髪を切るのは本当に嫌いだったのが、気がついたら慣れた場所に変わっていた。美容師のお姉さんも、今年で30歳。仕事を始めてからちょうど10年になるらしい。
こんな調子でめったに行かない場所なのに、その美容師とも長い付き合いがあるように感じてしまうのは、髪を切るというのが、単に実用のためだけでなく(そういう場合のほうがはるかに多いのだが)、いろいろな節目とぶつかるという理由があるように思う。入学試験、就職、結婚式、などなど。女性であれば、他人の結婚式や成人式などもあるだろう。迎えるべき場面に応じて、ちょっとした相談をする。そこから、会話が進んでいくことになる。だから、会った回数にしてみると、相手は自分のことをよく知っているようなこともある。髪を切りながらの会話は、こちらが眼鏡をとっていることもあって、ほとんど記憶に残らない。向こうにしてみても、半年に一度会うだけの相手のことは、ほとんど覚えていなくてもおかしくはない。しかしそれにしても奇妙な関係ではある。
さて、私の頭が禿げあがってしまったとき、事情は同じようなものなのだろうか。