温泉旅行

先月29日の発表は予想を遥かに上回る好評のうちに終わった。政治論争にならないように周到な言い回しを選択したおかげかもしれない。年配の方々からはよくわからないコメントをもらったが。世代的な経験によって理解のバイアスのかかり方はずいぶん異なるのだろう。今度は現代の原理主義ではなく、日本の60〜70年代について勉強することにしたい。
2日から4日にかけては、群馬の奥のほうにある四万温泉へ。「外部からの資本を入れていません」という触れ込みだったが、奥地にあってそんな気が起こらないのであろうと想像させるような場所だった。温泉というと観光地、飯はまずいし街は汚いというイメージしかなかったのだが、まったくもって予想を裏切られた。まずは一泊目は都会の若者が好みそうな、清潔でおしゃれな旅館だった。貸切露天風呂が三つもあり、調度品も食器も、ずいぶんと気を遣って選ばれたもののようだった。
そして二日目。積善館という文化財にも登録されているような古い旅館に泊まる。山に面して建てられているので、手前から奥に向けて順に新しくなる。いちばん手前は17世紀に建てられた日本最古の湯宿建築。我々が宿泊したのは、真ん中にある昭和六年築の建物。同じフロアに東条英機も宿泊したことがあるとか。古さといい雰囲気といい、文句のつけどころがない。こんなところで生活をしてみたいと思っていたような、そんな部屋だった。下の名前で呼ばれる部屋係(とても明るいおばちゃん)もいて、昔からの日本の旅館という雰囲気である。
泊まった部屋もよかったが、飯も最高だった。朝から温泉につかり、空腹に耐えながら朝飯を待ち、ごろごろして消化を促してから風呂に入り、昼飯を食べ、眠ければ昼寝をし、温泉につかり、晩飯を食べ、テレビを見て、温泉につかり…、ということを繰り返してきた。たまに本を読むくらい。何しろ観光地ではないので他にすることもない。とにかくもう、体だけではなく、頭の中まですっかりとふやかしてきた。
早寝早起きで、食って寝て風呂に入ってだったのだけど、そんなことを二泊三日でやってきて、自分は疲れていたのだということもよくわかった。張り詰め、緊張し、力んでいる。それなら少し力を抜いて生きていきましょうかというわけにもおそらくいかない。というわけで、定期的に極楽温泉旅行に行くようにしようと思った。そうでないから、同居人との関係がしばしば劣悪になり、お互いの疲労を倍加させるのだということが非常によく理解できたのである。