赤貧

同居人の父上様においしい中華料理を御馳走になる。食べたことのない高級食材がいくつかあった。埼玉では手に入らないからね。自分で作るものはなかなかうまいし、人に出すこともできると思っているけれど、やはり外でしか食べられないものは多々存在する。しかしそのためには銭が必要である。食べることが幸せという人間にとっては、幸せは銭で調達できるのである。
さて、父上様は私にこう言われた。「若いうちは赤貧でよいのだよ」。若き日の苦労という体験から出た言葉であるがゆえに説得力があったが、しかしそれ以上に、私にとっては大変ありがたい言葉であったということが重要である。同居人よ、覚悟しておきなさい。

いや、ちがった。清貧と言っていたのだった。同じ貧乏でもだいぶイメージがちがう。
とにかく自分では食べることのできない大変においしい晩御飯であった。ごちそうさまでした。