おしりの秘密

不愉快である。誠もって不愉快千万である。そのこと以外にはもはや何も考えることができないでいるのである。

尻に巨大な腫れ物ができたのである。「できもの」というほどのかわいらしさもない。色も赤黒くなってきた。我が尻を図々しくも占拠したまま、数日で去るであろうと推測した私の好意を尻目に、居座ったままである。具体的には、穴へと湾曲している縁の部分に直径五センチメートルを優に超える大きさである。私は非常にデリケートな尻をもつ。したがってこれまでにも幾度もぷちぷちはできていた。硬い椅子に長時間座るのがいけない。私は座り方を工夫することで痛みを避ける術を身につけた。しかし今回は規模が桁外れに大きい。


通常は気合いを入れて、きゅっと持ち上がった尻を作って歩行する。それが早足での歩行を可能にする。しかしながら、歩行時は反対側の縁に触れる。したがって片足を引きずるようにするか、あるいは極度の内股で歩くことになる。後者は外で敢行すると恥じらいを覚えずにはいられないし、何より疲れる。自転車に乗る際には、不自然なまでに尻を後方に突き出すが、それでも反対の縁に触れる。仰向けに寝ることもできず、椅子に座るなど論外である。


斯様なわけで、本日をもって皮膚科に赴くことを決意した。見知らぬおっさんに尻をさらす決意をしたのである。無論、これまでに経験したことなどあるはずもない。はじめての経験というものはしばしば人の心を躍らせる。しかし今回ばかりは幾分かの尻込みがある。だがもはや一刻の猶予もならないほどに差し迫ったことになってしまっているのである。


越して間もない見知らぬ土地では、行き着けの病院を作るのが一苦労である。だが、我が蕨市にはそもそも三つしか皮膚科のないことがまもなく明らかになった。それぞれ、自宅から徒歩五分、自転車で五分、自転車で十分である。自転車よりは徒歩のほうがいくらか好ましい。病院名から胡散臭さを感じつつも、わがままを言うことはできない。足を引きずり、時に顔をしかめ、ようやく病院へたどり着いた。


「本年二月をもって閉鎖いたしました」


仕方なく駅前の病院へ。自転車をよれよれとこぐ。「木曜日は休診です」


この二つの徒労とそれに伴うダメージにより、私の尻はさらに大変なことになったのである。私はユニクロのトランクスを愛用する者である。価格が手ごろである。しかしそいつが腫れ物を刺激するのである。もはや末期。仕方なくトランクスをずり下ろし、尻を丸出しにしていると、それを目撃した同居人が笑い崩れる。曰く、「完全に下ろせ」。


症状を確認するための写真撮影、氷嚢による冷却へと引き続くのであった。