父親学級

今日は自治体が主催する父親学級的なものに妻と行ってきた。今年に入って三度目の発熱から何とか復活して最初の外出。難儀な年である。
何やかんやで勉強になった。沐浴の仕方なんかは写真を見るだけではよくわからない部分があったのだが、ビニール製の気味が悪い赤子人形を使用して実際にやってみると、どんなかんじだがおおよその見当がついた。つい没頭して汗をかいてしまった。しかし、ビニール製だけあって、いろいろなところが不自然に曲がるので、実際の赤ん坊があんな格好になったりしたら救急車を呼ばなければならない。おまけに、男女ともに股のあたりが不必要にリアルだった。作りものだけに、あまりそこらあたりは熱心に洗うことができませんでしたね、変態みたいで。
あとはあれだ。プログラムの最初に「父親になるべき心構えを云々かんぬんケツの穴」みたいなビデオを見せられたのだが、そのビデオが製作されたのがもう20年以上前であろうことは措くとしても、内容がひどかった。夫を育児に参加させようという意図なのだろうけれど、育児ってのはこんなに大変なんだぞーとただただ脅すだけの内容。それなりに何かちょっとはやろうとしている人々が来ているわけなのだから、気持ちを萎えさせる以外の効果がなさそうだった。変な眼鏡をかけた変なおっさんが変な喋り方と変な抑揚で変なことを言っている部分が多かったので、その変なおっさんが出演している部分を削れば多少は意味のある内容もあるビデオだったように思う。
それよりはましだったけれどこれまたひどかったのは、すべて終わった後で男全員が感想を言わされたときのことだ。父親学級的なあれなので、当然のように「妊婦体験」というのがある。重りを体の前につけて、妊婦はこんな体で大変な毎日を送っているんだぞ、というやつ。個人的には肩にばかり重みを感じて、実際とはけっこう違うのであろうが、物を拾うのはけっこう大変だわなと思った。ただ腰を痛めないように、姿勢がよくなる。それで、けっこうな人々が「妊婦体験をやってみて妻の大変さがわかった、これからはもっと妻を大事にしようと思った」などと言っているわけだ。耳を疑いましたよ。そんなに腹のでかくなった奥さんと一緒に暮らしていて、なぜ大変そうだなーくらいのことを思わんのか? あんな重りをつけてみないとそんなことをもわからんのか? というわけで育メンなるものがはやっているわけだが、そこまで想像力が欠如していると、ラーメンもタンメンもないわ。もしかしたらサラリーマン的に、そういった答えを期待されていると思い、そうしたことを言ったのかもしれん。しかし一人が言えば十分でしょうに。
結局、何よりもよかったのは、実際に二組の夫婦が自分の子供を連れてきてくれたことだ。四ヶ月と七ヶ月。足にべたべた触らせてもらい、最後には抱っこもさせてもらった。たいそう不安そうであり、実にかわいそうだった。しかしこちらとしては大満足。買い物に行くと、母親に抱かれた赤ん坊が足をでろんとさせていたりぴょんこぴょんこさせていたりして、その足を握ってやろうかという衝動にかられるのだが、何か満たされた気持ちだ。俺が親だったら絶対に知らん男には触らせないけれど。もちろん父親学級的なやつに連れていったりもしない。そんなわけで、二組の夫婦と二人の赤ん坊に感謝。
註:「云々かんぬんケツの穴」というのは、私のすてきな先輩によるすてきな言葉です。すごく気に入ってぜひ使ってみたくなって…。